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最高裁判所第三小法廷 昭和54年(行ツ)43号 判決

東京都大田区大森東五丁目一二番六号

上告人

田野口等

右訴訟代理人弁護士

中條政好

東京都大田区中央七丁目四番一八号

被上告人

大森税務署長 菊地正

千代田区大手町一丁目三番二号

被上告人

東京国税局長宮下鐵已

右両名指定代理人

岩田栄一

右当事者間の東京高等裁判所昭和五二年(行コ)第七四号譲渡所得税更正並に再更正決定取消等請求事件について、同裁判所が昭和五三年一二月一九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中條政好の上告理由第一点について

所論の更正処分等取消の訴を不適法とした原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、採用することができない。

同第二点ないし第四点について

所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一号、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横井大三 裁判官 環昌一 裁判官 伊藤正己 裁判官 寺田治郎)

(昭和五四年(行ツ)第四三号 上告人 田野口等)

上告代理人中條政好の上告理由

本件は原裁判に対する上告であり上告理由書である。

処で、原裁判は一審判決を踏襲し、理由中において若干字句等につき手直しを施したるに過ぎない。そこで具体的上告理由の基礎となるべき、〈1〉判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令違背、〈2〉判決に附すべき理由の有無、〈3〉理由の齟齬等に係る事実関係は一審判決の摘示若しくは判示事実を援用するものである。

論旨第一点

一、原審は上告人の昭和三五年分及び昭和三六年分、この両所得税更正処分並に過少申告加算税賦課決定処分の取消を求める東京地方裁判所昭和四〇年(行ウ)第五三号、同昭和四二年(行ウ)第一六九号の両訴えを却下した。その理由は、

1 申告、更正、再更正、決定、修正申告等はいずれも、それぞれ独立の行為として行われるが、いずれも既に成立した一個の納税義務の内容の具体化(確定)をするための行為であって、相互に密接な関係を有する。殊にむづかしいのは再更正、再々更正等と申告、修正申告、先きの更正或は決定等の効力関係である。これを法的に解決を図ったものが、国税通則法第二九条である。原審並に被上告人はこの第二九条の解釈並に適用を誤って、却下の判決を為すに到らしめたものである。

論旨第二点

一、被上告人東京国税局長に対する昭和三六年分所得税更正処分に対する審査請求却下の裁決の取消しを求める訴えに関するものであるが、却下の理由は、審査請求申立期間の徒過を理由にしたものであるが、これは国税通則法第八七条第一項第三号(不服申立ての前置を要しないとする規定)の解釈を誤り、乙第一号証の一、二、を誤って使用している。

論旨第三点

みなす課税の解釈を誤っている。

みなす課税とは、個人間で土地や建物などの資産の贈与があったり、時価よりいちぢるしく安い価額でやりとりすると、資産をもらった人に贈与税が課税されるだけでなく資産を贈与した人などにも課税問題が生じます。つまり土地建物などの資産の贈与などをした人に対しその土地建物などをその時の時価で譲渡したものとみなして譲渡所得に対する所得税を課税する。しかし土地建物などの資産を贈与した人は実際には金銭の収入がないので課税の延期のため「贈与等に関する明細書」を所轄の税務署長に提出すると譲渡所得の課税関係はなくなる。この手続きをすることにより資産の取得価額が資産をもらった人に引き継がれ、もらった人が将来その資産を売却するときまで課税が延期される。

論旨第四点

請求棄却の部分について、

一、消滅時効

二、実質課税の原則

被上告人は左記二点に関する解釈を誤っている。

以上

(一、二審判決主文省略)

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